「この仕事、私がやった方が早いんだけど…」
「教える時間があったら、自分でやった方が確実なのに…」
「どうせあとからフォローしなきゃいけないんだから最初から私が…」
リーダーとして日々の業務に追われていると、そんな風に感じることはありませんか?
これは、多くのリーダーが抱える、とても深く、そして孤独な葛藤です。
その感覚に、思わずうなずいた方――もしかすると、知らず知らずのうちに“マイクロマネジメントの罠”にはまっているかもしれません。
部下に仕事を任せたはずなのに、つい細かく口を出してしまう。進捗が気になって、報告を頻繁に求めてしまう。「本人のため」と思って手を差し伸べていたら、気づけば自分が抱え込んでいた――。
けれど、その「早さ」や「確実さ」の裏側には、チームの自律や成長の芽を摘み、結果的に自分自身の負担を増やしてしまうという、見えない「罠」が潜んでいるのです。
なぜ、いまリーダーはマイクロマネジメントに陥ってしまうのか?
終わらない仕事と、時間へのプレッシャー
「目の前の成果は、絶対に外せない」
「このタスク、今週中に片付けないと…」
そんなプレッシャーの中にいると、部下に時間をかけて教えることが“遠回り”に思えてしまうものです。
ましてや、あなた自身が現場の最前線でも戦うプレイングマネージャーであれば、「自分でやった方が早くて確実」という思考は、むしろ“合理的”にすら思えるかもしれません。そう思って、部下に仕事を任せることを躊躇するリーダーが増えています。
でもそれは、“未来のための時間投資”を先延ばしにしているということ。
いつまで経っても、誰にも任せられない状態から抜け出せないループを、自らつくり出してしまっているのです。
見えない部下への、尽きない不安
テレワークやリモートワークの普及によって、リーダーはこれまで以上に「見えない不安」を抱えるようになりました。
・ちゃんと仕事をしているかな?
・一人で悩んでいないかな?
・成果に繋がる動きができているだろうか?
表情や空気感から感じ取っていた「小さなサイン」が見えなくなっている今、確認の手段が“言葉だけ”に限られることで、不安が増幅してしまいます。
その結果、頻繁なチャットや報告を求めるなど、無意識に部下を管理しすぎてしまう。けれどその行動は、部下にとっては「信頼されていない」「干渉されている」と感じさせ、むしろ関係性を遠ざけてしまうこともあります。
多様化するチームと、“理想”とのギャップ
今のチームには、年齢も価値観も働き方もさまざまなメンバーが集まっています。
特にZ世代と呼ばれる若手社員は、「上からの指示」よりも「自分で考えて動く」ことに価値を置く傾向があります。
また、中途入社で多様なバックグラウンドを持ったメンバーも多く、リーダーとして「全員に通じるマネジメント」をする難しさを感じていませんか?
これまでの“型”が通じない。
うまくいかないことが続くと、「いっそ全部、自分でやってしまった方が楽…」と感じてしまうのも無理はありません。
でもそれは、「チームで成果を出す」ことから、自ら距離を置いてしまうということ。
多様なメンバーを束ねる難しさの裏には、リーダー自身の「自信の揺らぎ」や「焦り」が隠れているのかもしれません。
「親心」や「優しさ」が、逆効果になることもある
部下を守りたい、苦労させたくない――そんな“親心”から、つい手を出しすぎてしまうこともあるでしょう。
また、「残業が続いているようだから、代わりに自分が引き取ろう」
「このタスクは難しそうだから、今回は私がやっておこう」
その気遣いや優しさは、本来とても大切なこと。でも、度を超すと「信用されていない」「やらせてもらえない」と、部下のモチベーションを下げる行動になってしまうことがあります。
本人にとって「チャレンジする機会」を奪ってしまっているとしたら――
それは、善意のつもりが逆に“成長機会を摘む”ハラスメントと言われかねないのです。
マイクロマネジメントは、あなたのせいではない
ここまで読んで、「もしかして自分にも思い当たるかも…」と感じたとしても、自分を責める必要はありません。
むしろ、それだけあなたが“真剣にチームのことを考えている証拠”です。
責任感が強く、面倒見がよく、細部まできちんと気配りができる――
そんなあなたの資質こそが、時にマイクロマネジメントという形で表れてしまうだけ。
大切なのは、「気づくこと」、そして「変えようとする意志を持つこと」。
次回【第2部】では
「どうすれば“任せられるリーダー”になれるのか?」
「未来への時間投資とは、具体的に何をすればいいのか?」
そんな問いに対するヒントを、一緒に探していきます。