キャリアカウンセリングをしていると、このようなお悩みを聞きます。
「あの人は私の気持ちを全然理解してくれない!」友人や同僚、家族との会話で、自分の意見に賛同してもらえないとき、あなたもそんな風に感じたことはありませんか?
最近は【共感】という言葉がよく使われるようになりました。たとえば、研修のグループワークでも「〇〇さんの意見に共感しました」というフレーズを耳にすることが増えています。しかし、私はそこに少し違和感を覚えます。その違和感の正体は、「共感」と「同意」の履き違えから起きているものです。
今日はこの2つの微妙な違いに焦点を当て、なぜコミュニケーションに齟齬が生じるのかを考えてみたいと思います。
共感と同意は違うもの
ある日、友達がこんなことを言ったとします。
「今日は仕事が辛くて大変。もうこの仕事辞めたい!」
あなたはその話を聞いて、「それは辛いよね、大変だったね」と共感することができます。しかし、同時に「でも、辞めるのは早計かもしれない」と思い、意見には同意しないかもしれません。
このように、共感はしていても、同意はしていないというケースはよくあります。
共感とは?
相手の感情や状況を理解し、その気持ちに寄り添うことです。相手の視点に立ち、感じ取ることが重要であり、たとえ意見に賛成できなくても、相手の気持ちを尊重することができます。
同意とは?
相手の意見や考えに「賛成・賛同」することです。つまり、相手の意見や行動を「正しい」と思う、または「自分と同じ考え」だと認めることを意味します。価値観や判断の一致が必要になるのが、共感との大きな違いです。
なぜ履き違えが起きるのか?
この2つを混同すると、コミュニケーションにすれ違いが生じます。
相手が「それは大変だったね」と共感してくれたにもかかわらず、「でも私の意見には賛成してくれない=理解してくれていない」と感じることがあります。
これは、「共感」と「同意」を同じ意味で捉えてしまっているからです。
相手にとっては、感情を理解してもらうことと、意見を支持してもらうことが同じに思えてしまう。
そのため、「賛同してくれない=共感してくれない」と誤解しやすいのです。
仕事や人間関係でのすれ違い
職場では、この違いが特に顕著に表れます。
たとえば、同僚が「このプロジェクトの進め方に不安がある」と話したとき、その気持ちは分かるよ。でも、今はこの方法がベストだと思う。」と言うのは、共感しつつも同意しないパターンです。
しかし、その同僚が「自分は理解されていない」と感じ、モチベーションを下げてしまうこともあります。リーダーとして部下と接する際も、部下の意見に共感しながらも、すべてに同意するわけにはいきません。この違いを理解し、共感していることは、明確に伝えることが信頼関係を築くために重要です。
誤解を防ぐために大切なこと
共感と同意の履き違えを防ぐために、以下の3つのポイントを意識しましょう。
相手の感情を確認する
共感を示すときは、「あなたの気持ちはこうだと理解したけど、それについてどう思う?」と問いかけ、相手が感じていることを確認しましょう。要約したり、「○○な気持ちだったんだね」と伝え返すことも有効です。
曖昧な表現を避け、明確に伝える
「私はあなたの気持ちは理解しているけれど、それに賛同しているわけではない」と、明確な言葉で伝えましょう。たとえば、「こうしてほしい」と具体的な行動を示すことで、誤解を減らることが出来ます。
意見の伝え方を工夫する
異なる意見を伝える際は、相手の立場や背景を理解し、慎重な言葉選びを心がけましょう。感情の共有を前提に、相手の視点を尊重することで、より良いコミュニケーションが生まれます。
まとめ
共感と同意を履き違えると、人間関係に誤解が生まれやすくなります。共感することで相手の感情を受け入れつつ、必ずしも同意する必要はないことを理解しておくことが大切です。
近頃、「大切な人の意見には共感しなければいけない」と思い込み、心が疲れてしまう人が増えています。
でも、必ずしも同じ意見でなくても良いのです。
SNSの「いいね!」ボタンを押すことはあっても、すべての投稿に同意しているわけではないですよね?それと同じように「共感」と「同意」は別物だと認識し、健全なコミュニケーションを築いていきましょう。