社員が育つ組織へ。新入社員研修を内製化した理由とその成果

企業研修プログラム設計

新入社員研修の内製化に取り組む中で、私が気づいたこと。
それは「社員の成長を支える研修には、企業文化と現場のリアルが欠かせない」ということでした。

外部研修では補いきれない、自社ならではの価値観や仕事の進め方。それらを丁寧に伝えることこそが、社員の早期戦力化や、組織全体の底上げにつながるのではないか――そんな思いから、私は新入社員研修の内製化に踏み切りました。

本記事では、人事担当としてゼロから研修制度を立ち上げた私の経験をもとに、内製化に取り組む上でのポイントや得られた成果、そして今後の展望についてお伝えします。

はじめに

中途入社して現場での経験を通じて、私は企業研修の在り方に疑問を抱くようになりました。特に感じていたのは、企業理念やビジョンの浸透不足、基礎知識の習得不十分さが、社員一人ひとりの成長を妨げているのではないかということです。そうした課題感から、私は研修の内製化を実現させる決意を固めました。

人事部異動から始まった「研修内製化」への挑戦

営業職として約1年従事した後、私は人事部へ異動となり、企業の教育制度全体を見直す立場になりました。従来はOJTを中心とした育成体制が主流でしたが、それでは十分とは言えないと感じていました。階層別研修の整備や、マネジメント層の育成支援など、育成体系の再構築が急務だと考えたのです。

役員からも「自社に合った教育体制をつくってほしい」との要望を受け、私は自社の価値観や現場のリアルに即した育成プログラムを内製することに取り組み始めました。

なぜ内製化という選択をしたのか

多くの企業では、研修を外部の専門機関に委託することが一般的です。確かに、外部研修は一定の品質や効率性が担保されており、基礎的なスキルを学ぶには効果的です。

しかし、実際に業務現場に戻ると「学んだことをどう活かすか」が曖昧なままになり、社員が実践に落とし込めずに終わることが多くありました。特に新入社員にとっては、企業文化や組織独自の暗黙知を理解しきれず、業務適応に時間がかかるケースも見られました。

そこで私は、研修の内容そのものを自社で設計・運営することにより、現場とのズレを最小限に抑え、学びが“行動”につながるような仕組みをつくる必要性を感じたのです。

研修内製化による5つのメリット

研修の内製化を進めたことで、以下のような具体的なメリットを実感しました。

  1. コストの最適化
    長期的な視点で見れば、外部研修への依頼コストを抑えることができます。
  2. 自社ニーズへの高い適応性
    業界特性や企業文化を反映した研修が可能になり、実務に直結した学びを提供できます。
  3. 学びの定着と継続性の向上
    社内講師による研修は、社員の実務を理解した上で進行されるため、学習効果が持続しやすくなります。
  4. 柔軟なアップデートが可能
    制度や市場環境の変化に応じて、タイムリーに研修内容を見直すことができます。
  5. 組織内コミュニケーションの促進
    社員同士のつながりや、現場と人事の相互理解が深まり、組織全体の一体感が高まります。

すべてを内製化すべきなのか?

とはいえ、すべての研修を内製化することには限界もあります。たとえば、専門性の高い知識や、大規模な集合研修などは、外部のノウハウを活用した方が効果的な場合もあります。

そのため私は、まずは新入社員研修を皮切りに、内製化を段階的に進めるという方法を取りました。「何を内製化し、何を外部に委託するか」という線引きを明確にすることで、リソースの最適化を図りました。

現場で実感した変化と成果

実際に新入社員研修を内製化してみて、最も大きな変化は「社員の反応の変化」でした。たとえば、ビジネスマナー研修ではロールプレイやグループワークを通じて、形式だけでなく“実務での活用”を意識させる設計にしました。

これにより、受講後すぐに行動に移す社員が増え、現場のマネージャーからも「違いを感じる」という声が寄せられるようになりました。

今後に向けて

その後も、階層別研修やキャリアデザイン支援のプログラムを内製化しながら、社員一人ひとりの“主体的な学び”を促す仕組みづくりに注力してきました。研修はあくまで手段であり、目的は“自律した人材の育成”です。

現在はフリーランスとして、企業研修の設計や講師業にも携わっていますが、今後も「実務に直結し、学びが行動に変わる研修」の実現を目指して活動を続けていきたいと考えています。

まとめ

研修の内製化は、単なる教育手法の一つではなく、企業の文化や戦略、人材育成の在り方そのものを問い直す機会だと感じています。画一的な外部研修では得られない“自社らしい学び”を追求することが、結果として社員の成長と企業の競争力向上につながると信じています。

これからも、組織の未来を支える人材育成の一助として、実践に基づいた知見を伝えていきたいと思います。

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