「実は…将来的には人事に行きたいんですよね」
部下との1on1で突然飛び出したこの一言。
戸惑いながらも、とりあえず「そうなんだ」と返したものの、内心はザワザワ……
今日は、部下から異動希望を打ち明けられたときの受け止め方と、このあとどのように進めていけば良いか、具体的に考えてみましょう。
直属上司の戸惑い
先日ある企業のマネージャーの方とお話していた際、このようなエピソードが出てきました。
「1on1の最中に、部下から突然こんな話が出たんです。」
『実は…将来的には人事に行きたいんですよね』
思わず、『え、今それ言う?』と内心ざわついたそうです。でも、目の前の部下を否定するわけにもいかず、とりあえず「そうなんだ…」と返すしかなかったとのこと。
実際、上司としては複雑ですよね。
「このままここで頑張ってほしい」という気持ちもあるし、異動なんて簡単にできる話でもない。何より、「人事に行きたい」という言葉の裏にある“本音”がよく見えません。
本当に人事の仕事を理解して言っているのか?
なんとなくキラキラしたイメージで言ってるだけじゃないのか?
いまの仕事に不満があるのでは?
結局その日は、うまく話を広げられないまま、「じゃあ、そのために今できることを考えてみようか」と何となく終えてしまったそうです。でも、そのあと「あれって、本当にこの子のためになっていたのかな…?どうしてあげたら良かったんだろう…」そう思ったようで、私とのカウンセリングでお話くださいました。
ひと昔前なら「まずは今の仕事をしっかりやってから言おうか」となっていたかもしれません。
でも、今は一人ひとりが“主体的なキャリア”を築く時代。
だからこそ、1on1は単なる目標管理の場ではなく、「キャリアの棚卸し」の場として活用されるべきだと感じます。
とはいえ、いきなり「人事に行きたい」と言われたら、戸惑うのも当然。どう受け止め、どう返せばいいのか迷う。
そんな、リアルなモヤモヤを感じたことがある方も、いるのではないでしょうか。
上司としてやりがちなNG対応
不意を突かれて、こんな返しをしてしまいそうになることもあるかもしれません。
- 「まずは今の仕事をしっかりやってからにしようか」
- 「異動なんて簡単にできる話じゃないよ」
- 「やりたい仕事ばかりが出来る訳じゃない」
でも、こうした言葉は、部下のキャリアへの主体性を否定することにもつながりかねませんので気を付けましょう。
聴くべきは「なぜ?」
最近は、キャリア支援や「人の可能性を伸ばす仕事」に憧れる若手も多く、人事という職種にキラキラした印象を持つ人も少なくありません。人事に興味を持つ背景には、こんな動機がよくあります。
- 人と関わる仕事がしたい
- 人の役に立つ仕事がしたい
- 採用や教育に興味がある
- なんとなく会社の“中心”にいる感じがする
でも、これはあくまでイメージの話。
実際の人事業務は、採用・育成だけでなく、評価制度設計や労務管理、法令対応、データ分析まで多岐にわたります。
だからこそ、部下の言葉をそのまま受け止めるのではなく、「なぜそう思ったのか?」という背景や本音を丁寧に掘り下げていくことが大切です。
今の経験を“線”でつなげる
たとえば—
▶「人と関わる仕事がしたい」→ どんな関わり方をイメージしている?
営業でもお客様やチームとの関係づくりが重要だけど、それとはどう違うと感じてる?
▶「採用に興味がある」→ どんな場面に魅力を感じている?
営業での“相手のニーズを引き出す力”や“信頼を築く力”は、面接官にも必要なスキルだよね。
「人事に行きたいなら、今この経験をどう活かせると思う?」
「どんな力が今後必要だと思う?」
「それを今から準備していくために、どんなことが出来ると思う?」
そんな問いを投げかけていくと、部下も「今やっている仕事はムダではない」と感じ、前向きに向き合えるようになります。
こうした対話を通して、「今の仕事で身につけた力」と「将来の希望」を結びつける視点を一緒に見つけていくことが、上司としてできる大きなサポートになるのではないでしょうか。
まとめ:1on1は未来への種まき
突然のキャリア希望に、上司としてどう向き合えばいいか戸惑うのは自然なことです。
でも、そのモヤモヤの瞬間こそ、部下の成長のきっかけになるかもしれません。
1on1は単なる目標管理の場ではなく、「キャリアの棚卸し」の時間としても活用できるはず。部下が話した“希望”をそのままにせず、「今の経験とどうつながるか」を一緒に考えてみませんか?
開けちゃいけない蓋を開けちゃった—?
そう思ったその瞬間は、実は未来への種まきの合図かもしれません。