部下との距離感に悩むあなたへ|信頼関係を築く上司の関わり方とは?

コミュニケーション

ーキャリアコンサルタントが見た、信頼と成長を阻む「距離感のワナ」ー

「信頼関係は築きたい。でも雑談が多すぎると馴れ合いになってしまいそうで…」
「注意したら嫌われるかもと思うと、言いづらくて…」

このように部下との「距離感」に悩む上司が、最近とても増えているように感じます。以前、部下の立場で悩んでいる方とのカウンセリングで「職場の人間関係は良好なのに…」朝が憂鬱になる理由についてブログに書きましたが、キャリアコンサルタントとして、多くの上司側・部下側と面談してきた中で、私自身もこのテーマの難しさを感じています。

信頼を築こうとするあまり、かえって信頼を失ってしまう—
今回は、そんな「距離感のワナ」とその乗り越え方について、現場で見えてきた実例を交えながらお伝えします。

なぜ距離感は難しいのか?

「部下との関係を良くしたい」その思いが、思わぬ落とし穴に変わることがあります。
ここでは、キャリアカウンセリングで見えてきた“4つの距離感のワナ”をご紹介します。

「仲良し」が育成を妨げる

距離が近すぎると、言うべきことが言えなくなる

「うちのチームは仲が良くて、よく飲みにも行くんです」
「でも…厳しいことは言いづらくて、つい私がカバーしちゃうんですよね」

最近は、仲の良いチーム環境や、風通しの良い社風を売りにしている企業も多いため、こうした声は少なくありません。仲の良さは心理的安全性に繋がりますが、行き過ぎると「育成者」としての役割がぼやけてしまうのです。

部下の成長には、「耳の痛いフィードバック」や「ストレッチが必要な目標」が不可欠です。それを伝える勇気を失ってしまうと、結果として部下の可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。

「嫌われたくない」が判断を鈍らせる

“いい人”でいたい気持ちが、かえって信頼を失う

「叱ったらパワハラと思われるかも…」
「嫌われたら関係が壊れる気がして、つい言えない」

上司にとって、「嫌われたくない」という感情はごく自然なものです。
しかしその気持ちが強すぎると、指導や判断があいまいになり、本当の意味での信頼関係が築けなくなることも。

部下が求めているのは「迎合してくれる上司」ではなく、「必要なときに、正しく導いてくれる上司」です。優しさと甘さは違います。言うべきことを伝える勇気が、信頼を深める一歩になるのです。

部下も「ちゃんと指導してほしい」と思っている

上司がためらっている一方で、部下側は“できていないことは、ちゃんと教えてほしい”と実は望んでいることも多いのです。

「正直にフィードバックをもらえると、自分が成長できる気がします」
「何も言われないと、期待されてないのかなと不安になります」

このように、部下も上司に「自分の成長のためにちゃんと向き合ってほしい」と感じている場合があるのです。「言わないことで守ったつもり」が、かえって信頼や意欲を損ねることにもつながるのだとしたら—

言うべきことを、タイミングと敬意をもって伝えることが、本当の信頼関係を築く第一歩になるのではないでしょうか。

「不公平感」がチームを分断する

ひいきに見える距離感が、静かな不満を生む

「〇〇さんとはすごく仲が良さそう。でも自分には話しかけてこない…」

上司にとっては「話が合う部下と自然に話しているだけ」でも、他のメンバーから見ると「ひいき」や「差別的な扱い」に映ることがあります。

こうした小さな不公平感が蓄積されると、チーム全体の信頼関係やモチベーションが低下します。公平な接し方、一貫性のある対応が、組織全体の土台を支えます。

「頼れる上司」が見えなくなる

親しみやすさだけでは、信頼されない

「普段は気さくで話しやすい。でも、トラブルの時に頼れなかった」

こんな声も、部下から耳にします。“お友達のような上司”は、親しみやすくはあっても、いざというときにリーダーシップを発揮できなければ信頼は一気に崩れます

部下は「この人なら導いてくれる」「いざという時に支えてくれる」と感じられる存在を求めています。親しみやすさと、役割を果たす強さの両立が求められるのです。

解決のヒント:プロフェッショナルな距離感

では、どうすればよい距離感が築けるのでしょうか?
私が面談の中でお伝えしているのは、「お友達」ではなく、「信頼を育てるプロフェッショナルな上司」を目指すという考え方です。「信頼を育てるプロフェッショナルな上司を目指す」とは、単に“人として好かれる”ことではなく、部下の成長と安心の土台をつくる存在になることだと私は考えています。

心を開かせる雑談 × 本音を伝える厳しさ

雑談で部下の緊張をほぐしつつ、フィードバックは逃げずに伝える。心理的安全性と、プロフェッショナルな厳しさのバランスを大切に。

誰に対しても公平で一貫した態度を

親しさの偏りは、「見えない壁」を生みます。チーム全体を見渡し、接し方にムラがないよう心がけましょう。

「役割」と「責任」を自覚する

部下はあなたを“信じてついていける存在”と見ています。親しみを持たれつつも、しっかりと軸のある態度を。

信頼は「仲が良い」だけでは築けない

信頼関係とは、「安心して働ける」「この人から学べる」と部下が感じられること。単なる“仲の良さ”ではなく、「この人にならついていきたい」と思える関係性こそが、真の信頼です。

“ちょうどよい距離感”は、一朝一夕には築けません。でも、意識し続けることで、必ず変化は起きていきます。

私はこれからも、キャリアコンサルタントとして、上司と部下が信頼し合い、共に成長できる職場づくりの支援を続けていきたいと思っています。

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