これまで、12年以上人材育成の現場に携わってきましたが、個人と組織の両方に寄り添う中で、確信していることがあります。それは「部下一人ひとりの心の中に、彼らなりの答えや、秘めた想いが必ず存在している」ということです。
しかし、その「答え」は、まるで宝探しのように、すぐに発見できるわけではありません。時には、言葉にならない漠然とした感覚として存在し、それを言語化するまでに時間がかかったり、あるいは「これで合っているだろうか?」という不安から、誰かに安心感を与えられるまで、口に出せないでいる部下もいることでしょう。
「どうすれば、部下のやる気を引き出せるんだろう?」
「管理職は時に孤独を感じるけれど、それでも部下の力になりたい」
そんな時、私が常に立ち返るのが「質問の仕方」です。ただ質問をぶつけるのではなく、「どのように問いかければ、部下が自らの内にある言葉を見つけ、自信を持って行動に移せるのか」を考えながら、深く掘り下げていくことです。
今回のブログでは、私がキャリア支援を行う中で培ってきた「質問力」の具体例をご紹介します。部下や後輩が「自分の言葉で語る」ことで生まれる、成長のプロセスを考えていきましょう。
目標設定を引き出す質問
新しいプロジェクトや仕事に取り組むとき、目標を一緒に描く質問はとても大事です。部下が「やらされ感」でなく、「自分ごと」として目標を捉えられるようになります。
たとえば…
- 「このプロジェクトで、〇〇さんは最終的にどんな状態を目指したい?」
- 「その目標を達成するために、最初の一歩は何だと思う?」
- 「〇〇さんが、特に力を入れたいポイントはどこかな?」
こう問いかけることで、部下は自分の中の想いを言葉にし、目標への責任感やモチベーションを高めていけます。
問題解決をサポートする質問
部下が壁にぶつかったとき、すぐに答えを与えるのではなく、相手が「自分でどう乗り越えるか」を考えられるように支援する質問をしましょう。
たとえば…
- 「これまでにどんな方法を試してみた? どうだった?」
- 「もし他にできることがあるとしたら、どんなことが思いつく?」
- 「仮にうまくいかなくても、どんな学びが得られそう?」
こんな質問が、部下の「考える力」を磨き、自信を深める土台になります。
進捗確認とフィードバックの質問
進捗確認は、単なる報告の時間ではなく、部下が自分の言葉で「気づき」を整理する大事な機会です。
たとえば…
- 「いま順調に進んでいる部分は? その理由は?」
- 「困っていることや、サポートが必要なことはある?」
- 「次のステップに進むために、いま最も大事だと思うことは?」
部下が自分の考えを整理し、主体的に行動できるようになります。
自信を引き出す質問
プレッシャーや新しい挑戦に立ち向かう部下には、「自分の強み」を思い出す問いかけが効果的です。
たとえば…
- 「これまでに〇〇さんが特に力を発揮できた瞬間は?どんな点がうまくいったと思う?」
- 「今回のプロジェクトで、〇〇さんのどんな強みや経験が活かせそう?」
過去の成功や強みを言葉にすることで、部下は「できる」という自信を持って一歩踏み出せるようになります。
自分の言葉で語るからこそ成長が生まれる
実は、相手が「自分の中にある本音や想い」を言葉にすること自体が、大きな成長のステップです。
私たちが問いかけることで、相手は「自分の言葉」を探し、自分の声で語れるようになります。
それは、与えられた答えではなく、「自分の中から出てきた答え」。
だからこそ、納得感や行動への覚悟が、ぐっと深まるのです。
まとめ:質問は相手へのエール
質問は、正解を当てるためのものではありません。相手の中に眠っている本音や力を、引き出すためのエールなんです。
問いかけを通して、部下が「自分の言葉」で語れるようになると、その瞬間から成長は始まります。そのとき、質問の仕方として大事にしたいのが、「〇〇さんは」という主語を明確にして伝えること。それによって「求められる答え」ではなく、「自分の答え」を安心して話せる空気が生まれます。
そして、もしも的外れな答えが返ってきても、決して否定しないこと。表情や雰囲気で「違うよ」というサインを出さないようにすることも大切です。それを察してしまうと、相手は「こう言わないとダメかな」と自分の言葉を閉じ込めてしまいます。正解・不正解ではなく、自分の考えを自分の言葉で発信することを応援していきたいですね。
質問は、上司にとっても、部下と一緒に進む道しるべになります。
このブログが、あなたの部下育成やコミュニケーションのヒントになりますように。