研修内製化までの道のり②

1. 探求の始まり

まずは始めたのは、どのような研修プログラムが必要かを調査することでした。
ビジネスマナーのコンテンツひとつとっても、多岐に渡り、書籍にあるようなすべてを網羅するのは不可能(というか不要)です。
読めば分かることは課題図書にでもして、いつか役に立つ知識として入れてもらえば良いとして、自社にとって何が必要なるのか?を選択していくことでした。

経営者をはじめ、経営幹部、マネージャーなど多くの方から、人材育成において以下のようなヒヤリングを実施しました。

・人材育成における問題や課題
・どのような状態で現場に配属されることが望ましいのか
・人事で行う研修でどのようなプログラムを実施してほしいか

さらに自社独自の文化や、先輩社員や上司とのコミュニケーションの取り方を事前にある程度学んでほしいと多くの声が挙がりました。

やはりいつの時代も、ポイントになるのは【コミュニケーション】ですね。


2. 研修内容の設計

ここからは頭を悩ませる日々が続きました。
プログラムを創る中で、研修内容・スタイル・日数・時間・場所・テキスト・・・・
すべてを包括的に考えて組み立てていかなければなりません。

私が拘りたかったのは、ただ座って講義を聞くというスタイルではなく、基本的には、自分たちで考えるワークを多く取り入れ、自分たちで創っていく研修を目指しました。
これでないと、結局聞いているだけで終わり、なんの役にも立たない内容になるからです。行動ベースにまで落とし込まないと、内製化している意味がありません。

3. 調整と実施

研修内容が固まった後は、実際の運用に向けた準備が始まりました。
テキストを作成するのが、本当に大変でした。著作権の問題や、資料の引用等、決まり事もあったため、都度確認しながら、パワーポイント用、社員に配布用などすべて準備するのが、当時は毎年恒例の残業仕事の一つでした。
また、登壇するのも私だけではなく、コンテンツによって育成に関わるマネージャーに講師を依頼しました。初年度は「集団に対して教える」という役割に、戸惑いを感じることもありましたが、自分の言葉で自分の経験も伝えることで、自分を含め、多くの管理職がたくさんの気づきを得られたようでした。研修を行う側も学びが多かったように思います。

4. 振り返りと改善

研修終了後には、毎日日報を回収することを決まりにしていました。
この日報は、テキストを振り返らずに、今頭の中に残っていることを自分の言葉でアウトプットすること、そして時間内に成果物を挙げることを目的にしていた為、今日のプログラムで受講生に何が残っているのか?を知ることに繋がり、非常に役立ちました。

また同時に、受講生の特性を理解することにも繋がり、その後トレーナーへのバトンを渡しやすくなったように思います。
この日報で、短い期間でも毎日成長していく姿が見受けられ、とても感動します。

最終日は、受講生自ら学んだことをアウトプットする機会を設けていましたが、そこで「自分が成長している実感が湧いた」といった前向きな意見が多く、ホッとしました。
私への通知表が渡されているような感じがする日でもありました。

5. 内製化のメリット

内製化第一弾の新入社員研修内作りを経て、私は多くのことを学びました。
最も大きな成果は、新入社員が多くの時間を費やした就活を経て、自ら選んだ企業に対してより深く考え、学び、安心して仕事に馴染んでもらえることです。
いまでも「自社ならでは」の学びが、多くの社員の成長に繋がっていると思います。

さらに、内製化することで、「新入社員はこういったことを学んでから来ている」という前提で現場に迎え入れる先輩社員は、共通言語を持ち、さらにコミュニケーションが活発になりました。研修に登壇したトレーナーも、新たな視点から自分の業務を見直す良い機会となり、スキルアップやモチベーション向上といった効果も感じました。

この新入社員研修を皮切りに、次の階層別、そして人材育成研修、キャリア研修、個別のキャリア面談の導入へと続いていきました。


終わりに

キャリアチェンジが活発になっている昨今、どの企業も同じかと思いますが、新しいメンバーが増えるたびに、どうやってその人たちを早く戦力化するかが課題です。

2023年度(第47回) 教育研修費用の実態調査によると、人材教育研修費用総額「増加」見込みの企業は6割強となり、ここ10年ほどで最も高い増加傾向です。

その理由として「コロナ禍が落ち着いたことで研修全体の見直しを検討しているため」「コロナ禍で中断していた研修を再開するため」「経営方針として人材育成に力をいれるとしているため」「キャリア教育やデジタル教育、リスキリング関連の教育を新設・強化するため」といった声があがっていました。

研修というと、どうしても「日常業務で忙しいのに…」「また何かやっている…」とネガティブな印象で参加が億劫になる方も多いと思います。実際、登壇時、最初の空気感で感じることも多々あります。心折れそうになるときも笑
いかに参加後【自分にとって】意味のある研修だったか?を感じてもらうため、やることで満足する研修にはならないように、実施していきたいものです。

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