個人的に、世代で括るのはあまり好きではありませんが「最近の若い世代は、日本語力が低下している」こうした悩みを耳にすることが増えています。(※そもそも低下と言う表現が相応しいかは、今日は一旦置いておくことにします)
特に、ビジネスの現場では、「伝わりにくい」「曖昧な表現が多い」といった課題が目立つようになりました。
私も、新入社員や若手社員を対象に研修を行う機会が多いのですが、彼らの言葉の使い方やコミュニケーションスタイルは、以前と比べて変化していると感じます。
なぜこうした変化が起きているのでしょうか?
仕事の現場ではどのような影響があるのでしょうか?
SNSとデジタル化が「伝える力」に与える影響
SNSやチャットアプリの普及により、若者たちは短い言葉でやり取りすることが当たり前になっています。
例えば、LINEやXでは、
✔ 絵文字やスタンプで感情を表現する
✔ 「り(了解)」「おけ(OK)」などの略語を使う
✔ 文脈を省略して伝える(「それな」「確かに」「まぁまぁ」)
こうした表現は、友達同士の会話ではスムーズに伝わりますが、ビジネスの場面では誤解を招くこともあります。なぜなら、仕事では意図を正確に伝えることが求められるため、簡略化された表現ばかり使っていると「何が言いたいのかわからない」と相手に思われてしまうことがあるのです。
仕事でのコミュニケーションの課題
「この企画、どう思う?」先日、新入社員向けに「効果的なコミュニケーション」をテーマに研修を行いました。参加者は全員20代前半で、普段はSNSやチャットでのやり取りが中心の世代です。そんな彼らと対話する中で、次のような気づきがありました。
言葉だけで伝えようとしない
「仕事では、相手に意図を明確に伝えることが大事だ」という話題でグループワークをしていたとき、「でも、言葉だけがすべてじゃないよね?雰囲気とか空気感で伝わるでしょ?」という話になりました。
確かに、表情や身振りなど、非言語もコミュニケーション大切な一部です。しかし、非言語も分かりづらい世代であることも事実で、たとえば、オンラインでは表情が乏しい、対面でもリアクションが薄いということも課題の一つ。だからこそ、「言葉だけがすべてではない」けれど、「言葉で伝える力は必須」なのです。特に仕事の場面では「書類」「メール」「チャット」など、言葉だけで伝えなければならないケースがあります。
「察してほしい」「なんとなくニュアンスでわかるはず」と思っていると、意図が伝わらず、仕事のミスや誤解につながることも。
曖昧な表現が多い
研修ではグループワークを行い、意見を発表し、互いにフィードバックし合うする場面があります。そこでも若手社員たちの発言には「いい感じ」「まぁまぁ」「そんな感じ」といった曖昧な表現が多く、具体性に欠けていました。
たとえば、「まぁ、いい感じですね」
この「まぁ」とは、「まぁまぁ」ってこと?「いい感じ」とはなにがどのように良い感じ?
⭕ 「ターゲットに合っているし、コストも抑えられるので良いと思います」
このように、理由や根拠をしっかり伝えることで、より正確な意思疎通ができます。
若者世代のコンテクスト重視
若者たちは、話の流れや状況に合わせて言葉を省略する傾向があります。「ヤバい」「ウケる」などがその代表格ですが、文脈次第で意味が変わる言葉を多様し、ニュアンスで会話が成立する世代なのです。
「ヤバい」
最高に良い →「このラーメン、マジでヤバい!(=すごく美味しい)」
危機的な状況 →「遅刻しそう、ヤバい!」
すごい(良くも悪くも)→「あの人の発言、ヤバかったね(=すごく衝撃的)」
「ウケる」
面白い →「その話、ウケる!(=笑える)
バカにしている →「あの人、まだあんなこと言ってるの?ウケるんだけど(=バカみたい)」
これらは、日本語の面白いところでもありますが、誤解を生みやすい部分でもありますね。特にLINEなどSNSで文字だけのやりとりだと「ヤバい」と書かれていて「これってどういう意味?」となることもあります。友人同士では「文脈を読めばわかる」と思い、こうした表現をよく使って会話が成立するかもしれませんが、ビジネスでは「言葉にしないと伝わらない」ことが多いのです。
明確に伝える力を鍛えるには?
仕事の現場では、次のようなポイントを意識することで、伝える力を高めることができます。
① 「主語・述語」を明確にする
×:「それ、ちょっと厳しいかも」
〇:「このスケジュールでは、納期に間に合わない可能性があります」
② 理由や根拠を伝える
×:「なんか違う気がします」
〇:「ターゲット層に合っていないので、別のアイデアを検討したいです」
③ 具体的な言葉を使う
×:「まぁまぁですね」
〇:「デザインは良いですが、色合いをもう少し明るくすると見やすくなります」
語彙力を増やし、相応しい場面で使うトレーニングが必要です。
まとめ
SNSやデジタル化、教育環境の変化によって、若者世代の日本語力には変化が見られます。若者世代が仕事で成功するためには、「言葉で正確に伝える力」を磨くことが欠かせません。
私たちができることは、
✔ 言葉の大切さを伝える
✔ 具体的な表現方法を学ぶ場を提供する
✔ 「察する文化」ではなく「言語で伝え合う文化」を意識する
言語は時代とともに変化していくものでもあるので、私たちもアップデートしながら、一緒に磨いていきたいです。
言葉や伝え方については色々思うことがあるので、また次の機会に書いてみたいと思います。