人の成長を支えるような役割を担う人には、「何を言うか」ではなく「どう在るか」が問われます。その根底には、自分なりの「関わり方の軸」が必要です。
キャリアコンサルタントとして、人材育成に関わる中でよく聞かれるのが、「どうすれば相手を変えられますか?」「どんな言い方をすれば伝わりますか?」という“教えるスキル”の悩みです。
もちろん、伝え方やフィードバック技術は大切です。でも、それ以前にもっと根本的な「影響力」を持つものがあると、私は思っています。
それが、「あり方」です。
すべては、あの日から始まった
私は23歳で初めて新規事業の責任者となり、年上のスタッフをまとめる立場になりました。
その中に、無愛想でムーディな女性スタッフがいました。私に対して心を閉ざし、関わろうとしない様子がありありと伝わってきます。周囲も「何を言っても変わらない人」とあきらめていた存在でした。
最初に私が彼女たちに伝えたのは、こんな言葉です。
「年齢も経験もあるあなたたちに、私が偉そうにとやかく言うことはできません。でも、責任者として売上を上げていかなくてはいけない。だから、思うことがあれば言ってほしいし、私も思うことは言います。」
でも本音を言えば、すぐにでも接客態度を変えてほしかった。 それでも私は、上から「指導する」ことよりも、「自分がどうあるか」を選びました。
“背中を見せる”という関わり方
私は毎日、お客様一人ひとりに丁寧に向き合い、笑顔で接しました。「この人にお願いしたい」と思っていただけるような、誠実で温かい接客を、彼女の目の前でやり続けたのです。
するとある日、ふと気づきました。彼女の態度が変わっている。。。
表情がやわらかくなり、接客中の会話も増え、お客様との距離が縮まっている。
その変化を見た別のスタッフから、こんな言葉をかけられました。
「あなた、なにしたの?あの人、別人みたいじゃない。」その瞬間、私は確信しました。
人は“あり方”に触れることで変わることがある。
キャリア支援も同じ。人を動かすのは「あり方」
「あり方」とは何か?
それはスキルではなく、“人としての関わり方の軸”だと私は思っています。
- 相手をコントロールしようとするのではなく、自分がどう在るかを考えること
- 一方的な上下関係ではなく、対等な関係で関わること
- 相手の可能性を、誰よりも信じて見守ること
キャリアコンサルタントとして人と向き合う今も、この姿勢を大切にしています。アドバイスやノウハウよりも、「この人の言葉なら受け取ってみよう」と思ってもらえるかどうか。それは、私自身の“あり方”にかかっていると感じています。
“教える”のではなく、“背中を押す”存在でいたい
私はこれからも「人に影響を与えるキャリアコンサルタント」でありたい。でもそれは、知識で教える存在ではなく、
「この人と話すと前を向ける」
「なんだかやってみようと思えた」
そんなふうに、“在り方”で誰かの一歩を支えられる存在でありたいのです。
だから私はこれからも、自分の「あり方」を問い続けていきます。
そして、変化のきっかけを探している人たちに、そっと寄り添える存在でいたいと心から思っています。