「このまま進めていいのかな…?」
「これで良いんだっけ…?」
中間管理職になると、上司からの指示はより抽象的で大局的なものになります。細かな手順を教えてもらえた若手時代とは異なり、「このプロジェクトをうまいこと成功させてください」「効率化を図ってください」といった、戦略レベルでの指示が増えてきます。
しかし、いざ動き始めると疑問が湧いてくることがあります。あなたは、モヤモヤしたまま仕事を進めてしまった経験はありませんか?私は何度もそんな経験をしてきて、”指示が曖昧なまま進んでしまう怖さ”を痛感することがありました。
そして、実はこのお悩み、中間管理職特有の課題でもあるのです。管理職として期待される「自律性」と「判断力」を発揮しながらも、上司の意図を正確に汲み取る必要がある。この絶妙なバランスが、中間管理職の難しさでもあります。
今日は、中間管理職として「どんなときに、どんな質問をすれば仕事がスムーズに進むのか?」を考えていきたいと思います。
ステップ1:「何から手をつけるべきか?」を問う
あるとき、上司からこんな指示を受けました。 「このプロジェクトの進行を見直して、もっと効率よく進めてください」……え?(一瞬フリーズ)どこからどう手をつけたら?と思いますよね。
こんなときは、まず行動の糸口を探す質問をします。
- 「具体的に、どの部分を優先的に改善すべきでしょうか?」
- 「期日は、どの程度の余裕をもって進めればよいでしょうか?」
この問いかけをきっかけに、上司の意図が「チェックポイントの見直し」と「タスクの細分化」にあることがわかり、ようやく具体的なアクションに落とし込むことが出来ました。
あまり大きな声では言えませんが、私の経験上、上司側(そして私たち管理職側も)は言葉足らずであることが多いです。だからこそ、指示がふんわりしているときには、「まず何をすればいいか?」を明確にする質問がカギになります。大切なことは、自分が「どのように行動するか具体的にイメージできているか?」を確認し、不足している点を質問することです。
ステップ2:「どの視点で見るべきか?」を問う
別のケースでは、「品質を高めてください」と言われたことがありました。こちらもかなり抽象的ですね。
こんなときは、「どういう状態を目指しているか」を具体化する質問をします。
- 「”品質”とは、どの部分を重視するべきでしょうか?」
- 「現状の課題として、どの要素が最もボトルネックになっていると考えますか?」
- 「他部署や全社的な目標との関連性はどこにありますか?」
この質問で、上司が求めているのが「品質管理の見直し」や「お客様の声の反映」だと分かり、的外れな改善をせずに済みます。 中間管理職として質問することは、「わからない」ことの証明ではなく、「どうすれば組織として成果を出せるか」を戦略的に考えている証拠です。
ステップ3:「実行プランの承認」を得る
プロジェクトでリーダーを任されたとき、「とりあえず、うまくやってね。よろしく」と言われて、頭が真っ白になったことがありました。この場合は、まず「承知しました」と受け止めた上で、実行プランの方向性「最初の一歩」を整理する質問をします。
- 「まず、どのような段階を踏んで進めるイメージでしょうか?」
- 「組織としての優先順位と、私に期待される役割や成果はどこになりますか?」
- 「他部署との連携や、承認が必要な意思決定の範囲はどこまででしょうか?」
こうして実行プランの方向性を具体的にすることで、動き出すための戦略を固めることができます。
定期的に「フィードバック」を求める習慣を
仕事を進める中で、私が特に意識していたのは、定期的にフィードバックを求めることです。
- 「この進め方で、組織目標との整合性は取れていますか?」
- 「管理職として私に期待されている役割や、組織への貢献は何でしょうか?」
- 「この戦略の変化で、軌道修正すべき点はありますか?」
このように、定期的にフィードバックを求めることで、経営的な視点を得られたり、上司の期待とのズレを早めに修正できるようになります。
そして実は、この”確認のやりとり”にはもう一つ大きな意味があります。
それは、上司の優先順位や判断軸、報連相のタイミングなど、仕事の進め方のクセや、価値観を知るきっかけにもなるということです。つまり、フィードバックをもらう=上司とのチューニングを早めに行うチャンスなんです。
中間管理職の私たちは、この仕組みを上下両方向で機能させる責任があります。上司とのチューニングを行いながら、同時に部下との間でも同様の関係を築いていく。これが組織全体のコミュニケーション品質を高める鍵になります。
このコミュニケーション頻度が高まれば高まるほど、上司の思考や指示の意図が読めるようになり、指示を待たずとも先回りした動きができるようになります。同時に、部下も私たちの意図を汲み取りやすくなります。
最後に:中間管理職だからこそ果たすべき役割
曖昧な指示や抽象的な目標を前にしたとき、「なんとなく動く」のではなく、「質問して明確にする」ことが、組織の成果への近道です。中間管理職として質問することは、決して「わかっていない証拠」ではありません。それは、組織の精度を高め、上司との信頼関係を築くための、戦略的なスキルです。
そしてこれは、部下の立場の人だけでなく、管理職の立場にいる私たちが、チームにこそ伝えていきたい大切な姿勢でもあります。
中間管理職として、私たちは上司から受けた曖昧な指示を部下に「翻訳」する役割があります。同時に、部下からの質問を上司に適切に「エスカレーション」する橋渡し役でもあります。この双方向のコミュニケーションを円滑にすることで、組織全体の生産性と働きがいを向上させることができるのです。
「戦略的に質問できるって強みだよ」そう言える組織文化を、一緒につくっていきましょう。そして、「戦略的な対話ができる管理職」として、組織の成長を支える存在になっていきましょう。