キャリア面談や1on1で、「将来どうなりたいですか?」「何か成し遂げたいことはありますか?」と聞かれ、言葉に詰まってしまった経験はありませんか?
「特にこれといってやりたいことも思い浮かばない…」「そもそも、会社が適材適所を見極めて配置してくれたらいいのでは?」
そう感じる自分に、どこか後ろめたさや焦りを抱いてしまう。
実は、私自身がまさにそうでした。
人生には様々な転換期が訪れます。 結婚、出産、育児、介護など、仕事以外のライフイベントは、私たちの価値観や働き方に大きな影響を与えます。「仕事第一で頑張りたいけれど、そうもいかない状況がある」「家庭とのバランスを取りながら、自分らしい働き方を見つけたい」そう感じるのは、決して不自然なことではありません。
※この記事は、少し長いお話になります。お時間があるときに、温かい飲み物でも飲みながらゆっくりと読んでいただけると嬉しいです。
“やりたいことが分からない”のは、まだ見えていないだけ
キャリアカウンセリングでも、「やりたいことが分からない」という声はよくあります。ですが、それは「自分には何もない」わけでは決してありません。
たとえば…
- まだ知らない世界が多い
- 選択肢が多すぎて整理がつかない
- 自分に合うものが言葉にできていない
つまり、“やりたいことがない”のではなく、“まだ見えていないだけ”で、これは、とても自然な状態です。
特に、ライフステージが変化する時期には、これまで大切にしてきたことや、これから大切にしたいことが変わり、将来の方向性を見失いがちになることもあります。
キャリアの形は人それぞれ。答えがなくてもいい
やりたいことがはっきりしていて、それに向かって努力を重ねる人もいます。一方で、目の前の仕事に丁寧に取り組むうちに、自分なりの道にたどり着く人もいます。私はまさに後者のタイプでした。
だから、面談のときに上司から「どうなりたい?」「何を目指してるの?」と聞かれるのが少し苦手でした。
「やりたいことと言われても、そもそも何があるのかも分からないし…選択肢を示してもらえたら考えられるかもしれないけど…」と、心の中で思っていたものです。
やりたいことが明確で突き進んでいる人を見ると、素直に「いいな」と思う反面、「自分はそこまでモチベーションが高くないのでは?」と、比較して落ち込んだこともあります。
けれど今思えば、それは“モチベーションが低い”のではなく、まだ明確な方向が見えていないだけだったのです。
それに、仕事へのモチベーションの源泉は、キャリアアップだけではないはずです。 誰かの役に立ちたい、日々の業務をきちんとこなしたい、という気持ちも、大切なモチベーションです。
誰もが同じスピードで“これだ”というものに出会えるわけではありませんし、そもそも出会い方も人それぞれなのです。
また、部下を持つ立場の方にお伝えしたいのは、「答えられない=向上心がない・好奇心がない」という評価は、必ずしも正しくないということです。むしろ、今の仕事に真摯に向き合う力を持つ人は、地に足のついたキャリアを育てていける人でもあります。
特に、仕事と家庭の両立に奮闘している方は、時間やエネルギーが限られている中で、目の前の仕事に真剣に取り組んでいることが多いのではないでしょうか。
もしヒントが欲しいなら─「やりたくないこと」から考えてみる
「何か見つけたい。でも何も思いつかない…」そんなときは、“やりたくないこと”を挙げてみるという方法もあります。
たとえば…
- ずっと座りっぱなしの仕事は苦手
- 数字に追われる環境はしんどい
- 人前に立つ仕事は極力避けたい
このように“苦手”や“避けたい”を整理することで、逆に「それ以外は試してみたいかも」と感じることが出てくることがあります。消去法からでも、興味や適性の輪郭は見えてくるのです。
「仕事と家庭の両立で時間的な制約があるから、通勤時間が長い仕事は避けたい」「体力的な負担が大きい仕事は厳しい」といった視点も、「やりたくないこと」に含めて考えてみるのも良いかもしれません。
キャリアは「選ぶ」より「育てていく」もの
キャリアは、人生のある時点で決めてしまうものではありません。選んだ仕事や、与えられた環境の中で、何を感じ、どう工夫し、自分なりに意味を見出し花を咲かせていくか?
その積み重ねが、“自分らしいキャリア”に繋がっていくのです。
「やりたいことが見つからない=仕事に本気じゃない」わけではありません。むしろ、様々な制約がある中で、どうすれば今の状況で最大限の力を発揮できるかを考えることこそ、真摯な姿勢の表れかもしれません。好奇心や成長意欲は、静かに、でも確かに心の中に育っています。
実際に、カウンセリングを通じて自己理解を深めていく中で、
- 「この仕事をしているときの自分が好き」
- 「こういう環境だと頑張れる」
- 「これはあまり得意じゃないかも」
といった“自分の軸”が、少しずつ浮かび上がってきます。
もし一人で考えるのが難しいと感じる場合は、ぜひ誰かに話を聴いてもらいながら、言葉にしていくことをおすすめします。キャリアコンサルタントのような専門家だけでなく、信頼できる同僚や友人、家族に話を聞いてもらうだけでも、新たな気づきが得られることがあります。
まとめ:キャリアはあなたのペースで育てていくもの
「やりたいことが分からない」と感じるのは、可能性が閉じているのではなく、これから広がる余白があるということ。そして、その余白には、仕事だけでなく、あなたの人生全体にとって大切な要素が含まれているはずです。
大切なのは、“今の自分”に正直であること。
そして、小さな違和感や好奇心を見逃さずに拾っていくことです。時には、立ち止まって、本当に大切にしたいものは何か、どんな働き方なら自分らしくいられるかを考える時間も必要です。
だからこそ、自分の歩幅で、一歩ずつ。
その一歩が、未来のあなたにつながっています。