人材育成に必要な「成功の再現性」とは?上司ができる関わり方

リーダーシップ・部下育成

失敗したときには原因を振り返り次に活かす。そんな場面は、日々自然と行われているのではないでしょうか。

一方で、うまくいったときに、「なぜそれが成功したのか?」を振り返る機会は、どれくらいあるでしょうか?もしかすると、私たちは“失敗”には敏感でも、“成功”には鈍感になっているのかもしれません。

実は今日のお話、私自身がカウンセリングや企業研修の場で、とてもよく扱うテーマでもあります。

人は、「足りないこと」「できなかったこと」の方が、目につきやすい生きものです。「失敗は成長のもと」という言葉があるように、失敗には改善点があり、それに向き合うことが“成長”だと捉えやすい。一方で、うまくいったことには理由が見えにくく、「たまたま上手くいった」で終わってしまうことも少なくないのです。

でも、本当に目指したいのは「失敗を減らすこと」だけではなく、うまくいったことを再現し、継続的な成果につなげていくことのはずです。特に若手社員にとって、「なぜうまくいったのか」を自分の言葉で振り返ることは、自信を育み、強みを磨くうえで欠かせないステップです。

今日は、うまくいったことが見過ごされがちな背景と、上司や育成側としてどんな関わりができるのかについて考えていきます。

なぜ“できたこと”は振り返る機会が少ないのか?

以下のような傾向が、成功の振り返りを妨げていることがあります。

謙遜や遠慮が美徳とされる文化

成功を声に出すことに「自慢っぽい」「調子に乗ってると思われたくない」というブレーキがかかる。

自分より上の存在と比べてしまう

「まだまだです」と言ってしまうのは、優秀な先輩と比べてしまうため。他者基準で見ている限り、自分の“できた”は認識しにくい。

成功の理由がわからない

経験が浅いうちは、なぜうまくいったのかを分析するスキルがまだ育っていない。
言語化できないからこそ、「運がよかった」「お客様が良かった」「誰がやっても同じ結果だった」と処理しがち。

でも、そこで止まってしまえば、自分の強みや工夫が育たないまま終わってしまいます。

大切なのは「成功の再現性」を育てること

仕事において本当に目指すべきは、失敗を減らすこと以上に「うまくいったことを再現できる力」を育てることです。

成功には必ず、何らかの原因(要因)があります。「原因があるから結果がある」これはビジネスでも人生でも共通する、いわば”原則”です。にもかかわらず、「うまくいったのはたまたま」「自分の実力じゃない」と片づけてしまうと、本来あった“成功のヒント”を見逃してしまいます。そこには、間違いなく「あなただったから」こその成功があったはずなのです。

原因と結果の関係を丁寧にたどること。そうすることで、再現できる成功が少しずつ積み上がっていきます。

一度きりの成果ではなく、次に繋げられる成功。それを支援するのが、上司や育成担当の役割ではないでしょうか。

上司としてできる2つの具体的な関わり方

「どうしてうまくいったと思う?」と問いかけてみる

うまくいったときこそ、「どうして成功したのか?」を問いかける習慣をつけましょう。それにより、成果が“たまたま”ではなく、“自分で導いたもの”だと実感できるようになります。

さらに重要なのは、問いかけたあとに相手の言葉で語らせることです。
たとえば「どうしてそう思ったの?」「そのときどんな判断をした?」など、内省を深める質問を重ねながら、自らの言葉で整理させていくことがポイントです。

そして、その答えに対してしっかりと承認の言葉を返すこと。
「なるほど、そこを意識して動けていたんだね」「それはあなたの判断が活きた場面だったんだね」など、自分の力で導いた成功であることを、言葉で認めて伝えることで、成功体験が“自信”として定着しやすくなります。

小さな成功をチームでシェアする場をつくる

朝礼やミーティング、日報の中に「よかったこと」や「成長実感」を入れる場をつくりましょう。成功体験を共有することで、振り返ることが“習慣”になっていきます。

終わりに

失敗の振り返りは大切です。でもそれ以上に、成功を言語化し、次に活かす力を育てることが、育成には求められています。「なぜうまくいったのか?」に目を向ける視点は、再現性を生み、次の成果への布石となります。

そしてそれは、上司である私たち自身にも当てはまることです。チームが成果を出せたとき、自分の関わりや判断がどう作用したのか。その成功体験にこそ目を向けることで、リーダーとしての成長にも繋がっていきます。

内省の問いかけは、若手に向けたものでもあり、同時に自分自身への問いかけでもあるのです。

まずは、あなた自身の「うまくいったこと」を思い出してみませんか?
そして、それがなぜ成功したのかを、ぜひ言葉にしてみてください。

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