良かれとした事がなぜ?実は若手を悩ませる「違和感」の正体

リーダーシップ・部下育成

先日、あるキャリアカウンセリングの場で、20代の若手社員からこんな相談がありました。

「上司から仕事を任されて私なりに頑張ったんです。資料を提出したら、“OK!ありがとう、あとはやっとくね”って言われて…。ホッとした気持ちと同時に、なんだかモヤモヤしてしまって。」

そのモヤモヤの正体はいったいなんでしょうか。

もちろん、上司に悪気はありません。むしろ、忙しい中で手を貸す“フォローのつもり”だったかもしれません。ですが、こうした何気ない一言が、若手のやる気や自信に影を落とすことがあるのです。

今日は良かれと思ったことが、部下のモチベーション低下に繋がってしまうことについて考えてみたいと思います。

引き取りが生む”誤解”

上司が「あとやっておく」と言う背景には、
・納期の迫ったスケジュール
・クオリティの担保
・リスクの先回り
など、当然ながら現場の事情があります。

一方で、若手社員からすればそれは、「最後まで任せてもらえなかった」「自分のアウトプットに価値がなかったのかもしれない」という”信頼されていない”という思いにつながってしまうことがあります。

若手世代が重視しているのは「経験」と「信頼」

近年の若手は、“責任を重く背負いたくない”傾向がある一方で、「自分が成長できているか」「意味ある(価値ある)仕事をしているか」には非常に敏感です。

そのため、「任された」「信頼された」という体験こそが、”自分にはできる”という自己効力感や、モチベーションに大きく関わってくるのです。たとえミスがあったとしても、自分でやりきった実感や、そこからのフィードバックが次の成長を促します。

引き取る前にできる上司のひと工夫

若手からモヤモヤが上がる場面では、任せた仕事を引き受けることそのものより、実は「どのように伝えたか」「どう受け止められたか」が問題になるケースが多く見られます。

例えば――

  • 「ありがとう。ここまでよくやってくれたね。あとは一緒に調整していこうか」
  • 「今回は時間の関係でこちらで仕上げるけど、次は最後まで任せられそうだね」
  • 「60〜70点で十分。仕上げはフォローするから、まずやってみて」

このような声かけは、“信頼している”というメッセージを明確に伝えながら、引き取ることをフォローに変えることができます。

“任せ方”を見直すことで、関係性が変わる

カウンセリングを通じて感じるのは、若手は「もっと任せてほしい」ということではなく、「自分のことを信頼して関わってほしい」と思っているということ。その信頼感を伝えるには、ただ仕事を渡すだけでなく、“任せ方”の質が問われます。

ゴールと役割分担を明確にする

「仕事の目的」「なにをどこまでをお願いするのか」「何を期待しているのか」を明らかにすることで、若手も安心して取り組むことができます。

進捗に応じた“伴走型”の支援

任せっぱなしにせず、途中での確認や声かけを通じて、「一人で抱えてていいのかな?」という不安を和らげます。

終了後のフィードバックを丁寧に

やりっぱなしにせず、結果に対する言葉やアドバイスを伝えることで、「ちゃんと見てもらえた」「成長できた」という実感につながります。

といった“任せ方そのものの考え方や伝え方”が非常に重要です。任せるとは、「見守りながら信じること」。任せ方を変えるだけで、関係性もモチベーションも、驚くほど変わっていきます。

まとめ:任せるとは、信じて見守ること

余談ですが、私も以前上司に「99%は信頼してるけど、1%は一緒に確認しよう」という言葉を掛けられて、信頼されているなんとなく安心感があった覚えがあります。もしそこで、「100%信頼している」と言われたら、ちょっとプレッシャーになっていたでしょうし、最後の最後は上司を頼って良いんだ…という気持ちを味わっていた気がします。

引き取りではなく、育成の視点で「任せ方」を選ぶ。それが、若手との信頼関係を築きながら、主体性や成長意欲を引き出す鍵になります。

日々の忙しさの中でつい口にしがちな「あとやっとくね」。

でもその一言が、未来の芽を摘んでしまっているとしたら――
今日から、少しだけ言い換えてみませんか?

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