見逃してない?部下の小さな変化|メンタル不調のサインと適切な声かけ

メンタルヘルス

「声が小さくなった気がする」
「いつもより雑談が少ない?」
「なんとなく、目が合わない…」

こんな「なんとなく」の変化を、あなたは見逃していませんか?

メンタル不調のサインは、教科書通りに現れるわけではありません。実際の職場では、そのサインが微妙に変化し、気づくのが難しいことが多いものです。しかし、上司や同僚として大切なのは、こうした小さな変化に気づくこと。それが、メンタル不調を早期に察知するための第一歩です。

変化は既に始まっている

私もこれまで、メンタルヘルスに関わる様々な相談を受けてきました。

ある時、部下の遅刻や欠勤が増え、業務効率が下がっていると悩む上司の話を聴いたことがあります。詳しく確認すると、その部下は家庭の事情を抱え、無理をして働き続けていたことが分かりました。普段は弱音を吐かない責任感の強い人でしたが、上司が「最近残業が増えているように感じるけど、大丈夫?」と声をかけたことで、本人も自分の状態を受け止め、休職に至ったのです。もし上司の気づきが遅れていたら、もっと深刻な状態になっていたかもしれません。

「なんとなく」に気づくには、日頃からコミュニケーションをとり、よく観察しておくことが何よりも大切です。日々の業務や雑談の中で、相手の些細な変化を見逃さない意識が、早期発見へとつながります。

メンタル不調のサインとその背景

メンタル不調の兆しは、普段の言動や行動に現れます。具体的にどのような変化に注目すれば良いのでしょうか。

勤務態度の変化

  • 遅刻や欠勤が増える
  • 業務効率が低下する
  • ミスが増える、集中力が落ちる
  • 服装や身だしなみが乱れる

言動の変化

  • 会話が減り、返事が遅くなる
  • 感情の起伏が激しくなる、怒りっぽくなる
  • ネガティブな発言が増える、自責的になる
  • 「すみません」と言いがちになる、チームの会話に参加しなくなる

身体的な変化

  • 食欲不振や過食
  • 睡眠の質の低下(不眠や仮眠)
  • 疲労感が続く、疲れやすくなる
  • 頭痛や肩こり、めまいなどの身体症状が増える

こうしたサインは、部下が自分のメンタル状態をうまく表現できないために現れるものです。言葉にできない“SOS”が隠されていると捉えることができます。

変化に気づいたらどうする?

「変化に気づいたけれど、どう対応すればいいのか…」そう不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、声をかけることは必ずしも相手のプライベートに土足で踏み込むことではありません。

メンタルヘルスにおける一次対応とは、専門家による治療前の段階で、周囲の人が気にかけて声をかけ、話を聴き、必要に応じて本人同意のもと、社内の相談窓口や、専門機関につなぐことです。ここでは、具体的な声かけのポイントをお伝えします。

声かけのポイント

具体的に、客観的な事実を伝える
「最近、〇〇さんの元気がないように見えるんだけど、何かあった?」といった曖昧な表現ではなく、「最近、〇〇さんの残業が増えているように感じるけど、大丈夫?」のように、観察した具体的な行動や事実を伝えます。これにより、相手も状況を把握しやすくなります。

相手を気遣う気持ちを伝える
「何か困っていることはない?」「力になれることがあれば言ってね」など、相手を心配している気持ちを率直に伝えます。

決めつけず、問いかける姿勢で
「疲れてる?」などと決めつけるのではなく「何かあったのかな?」と、相手から話を引き出す姿勢で問いかけましょう。相手が話したくない場合は無理強いしないことが大切です。

プライバシーに配慮し、場所を選ぶ
周囲の目が気にならない、静かで落ち着ける場所を選びましょう。他の同僚に聞かれないよう、配慮することも重要です。

傾聴の姿勢で、焦らず見守る
相手が話し始めたら、途中で遮らず、共感的に耳を傾けましょう。すぐに解決策を出そうとせず、まずは相手の気持ちを受け止めることに徹します。

私は企業での研修の際も、参加者の不調を察した際には、必ず気にかけていることを伝えるようにしています。

もし、対応に迷ったら…私自身、何度も「これって私だけで対応していいのかな?」と迷ったことがあります。でも、迷うこと自体が、相手を気にかけている証拠です。その一歩が、相手に大きな安心を与えることになります。

メンタル不調の背景に目を向ける

メンタル不調の背景には、その人の生活全体があることがほとんどです。特に中間管理職やリーダーの方々は、自身の家庭との両立や過度な責任感からくる疲れ、周囲の期待に応え続けることへのプレッシャーが影響していることが多いと感じています。

部下が何か変わった様子を見せたとき、その背後にあるストレスや状況に目を向けてあげることが重要です。もしかしたら、個人的な問題だけでなく、職場環境や業務内容に起因するストレスが隠れている可能性もあります。

困ったときは、頼れる場所がある

もし、対応に迷ったり、専門的なサポートが必要だと感じたら、本人同意のもと、一人で抱え込まずに外部の専門機関を頼ることも大切です。

例えば、まずは所属する会社の相談窓口や人事、メンタルヘルスに関わる部署など、社内のリソースを検討してみましょう。もし社内に相談しにくい場合は、以下のような外部機関も活用できます。

  • 厚生労働省が運営する「こころの耳」:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトで、心の健康に関する情報や相談窓口がまとめられています。本人だけでなく、ご家族や職場の方向けの情報も充実しています。
    「こころの耳」厚生労働省
  • 地域の保健所や精神保健福祉センター:専門家による相談支援を行っています。
  • EAP(従業員支援プログラム):導入している企業であれば、従業員とその家族が利用できる外部の相談サービスです。

結論:気づきが、誰かの安心に変わる

完璧な対応を目指さなくても、小さな変化に気づくことができれば十分です。大切なのは、部下を「気にかけているよ」というあなたの温かい気持ちです。そのサポートが、彼らにとって大きな安心へと変わるのです。日頃からのコミュニケーションと観察を心がけ、あなたが「なんとなく」と感じた変化が、誰かの心を守る大切な一歩になりますように。

タイトルとURLをコピーしました