【第2部】”教えちゃった方が早い”を手放す-部下を育てるリーダーの問いかけ術

リーダーシップ・部下育成

【第1部】でお伝えした「教えちゃった方が早い」という短絡的な思考が招くのは、部下の成長機会の損失、モチベーション低下、そしてリーダー自身のさらなる疲弊という「見えない罠」です。

この負のループから抜け出し、真のリーダーシップを確立するためには、「短期的な効率」よりも「長期的な成長」に目を向けた「未来への時間投資」が必要です。今日はその辺りを一緒に考えていきましょう。

「任せる」勇気と「見守る」忍耐力

まず前提に、部下の成長を信じ、仕事を「任せる」勇気を持ちましょう。

完璧な成果を求めず、小さな仕事からでも良いので、部下が「自分で試行錯誤する時間」と「失敗から学ぶ機会」を与えることです。リーダーとして、部下が完璧にできなくても、まずは「やらせてみる」という忍耐力が求められます。

体験談:入社4年目の部下に任せた日

以前、私が新しい研修プログラムを立ち上げたときのことです。本来であれば私が構成も資料作成も全てやるところでしたが、当時入社4年目のAさんに「今回は、企画から進行まで任せてみよう」と決めました。正直、資料の完成度も進行のスムーズさも、私がやった方が早かったと思います。実際、進行に少し詰まった場面もありました。

でも、そのあとAさんが私にこう言ってくれました。「全部やらせてもらえたことで、自分に足りないものがすごく見えました。でも、やり切れたのが嬉しかったです」このとき、「うまくやる」以上に「自分で考え、経験を通して学ぶ」ことは、こんなにも力になるんだと、私自身が教えられた気がしました。

ただし、完全に放置するわけではありません。本当に困っているサインを見逃さず、「ここぞ」というタイミングで適切なサポートに入ることが、「放任」ではなく「見守る」ということです。

「答え」ではなく「問い」で引き出す

マイクロマネジメントを脱却する上で最も強力な武器となるのが、「答え」を直接教えるのではなく、「問い」を投げかけるコミュニケーションです。

  • 「この課題、どうすれば解決できると思う?」
  • 「他にどんな選択肢があるかな?それぞれのメリット・デメリットは?」
  • 「そのためには、次に何を試すべきだと思う?」

部下が行き詰まっているように見えても、すぐに解決策を提示せず、「〇〇の資料にヒントがあるかもしれないよ」「過去の事例で似たようなものがあった気がするけど、調べてみた?」など、あくまで方向性を示すにとどめます。

部下に1on1ミーティングで自分の考えを共有してもらう機会を作ることで、部下自身の頭が整理され、リーダーも部下の理解度や課題を把握できます。

「心理的安全性」のあるチーム環境

部下が安心して挑戦し、成長できる環境を整えることは、リーダーの重要な役割です。

  • 失敗を許容する文化の醸成:
    部下が失敗したとき、あなたは何て声をかけますか?
    失敗は成長の糧であることをチーム全体で共有しましょう。部下が自分で努力した結果の失敗は、決して責めるのではなく、「次にどう活かすか」を一緒に考え、再挑戦を促すことで、部下は安心して挑戦できるようになります。
  • 報連相の「質の向上」:
    無意味な「監視のための報告」を求めるのではなく、何のために、どの程度の頻度で、どんな情報が必要かを明確に伝えましょう。必要な情報が的確に共有されることで、リーダーの不安も解消され、部下も「信頼されている」と感じることができます。
  • 個別に向き合う1on1:
    定期的な1on1ミーティングは、部下の個性や強み、キャリアプランを理解し、個別最適なサポートを行うための貴重な時間です。業務の進捗確認だけでなく、部下の「なぜ」や「どうしたい」に耳を傾けることで、深い信頼関係を築き、部下の自律を促す土台となります。

リーダー自身の「セルフマネジメント」と「マインドセット」の転換

リーダーシップの変革は、まずあなた自身の内面から始まります。

  • 自身のマネジメントスタイルを客観視:
    自分がマイクロマネジメントに陥っていないか、常に振り返る習慣を持ちましょう。部下からのフィードバックに耳を傾ける勇気も必要です。
  • コントロール欲求の認識と解放:
    「全てを完璧にコントロールしたい」という欲求が、かえってあなた自身を縛り、部下の成長を阻害していないか自問自答しましょう。
  • マインドセットの転換:
    リーダーの役割は、部下に「指示を出す人」から、部下の「成長を支援する人」、そして「チームの可能性を最大化する人」へと変化しています。あなたの「心配性」や「責任感の強さ」は、部下をきめ細やかにサポートする「強み」に変えられるのです。

あなたらしい「自分軸リーダーシップ」を確立する

リーダーのあなたにとって、「教えちゃった方が早い」という葛藤は、責任感が強いがゆえの苦しみであり、決して悪いことではありません。しかし、その先に広がる「見えない罠」を認識し、一歩踏み出す勇気を持つことが、今、求められています。

あなたの「自分軸リーダーシップ」を確立し、自信を持って部下を信頼し、任せてみましょう。それは、部下が「自分らしく働く」力を育むだけでなく、あなた自身が本来やるべき戦略的な業務に集中し、あなたらしく働く未来へ繋がる、何よりも価値ある「投資時間」となるはずです。

もし今、あなたがこの葛藤の中にいるなら、今日から少しだけ「問いかけ」に時間を割いてみませんか?その一歩が、きっとあなたのリーダーシップとチームの未来を、大きく変えるでしょう。

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