「自己評価は高いのに、実力が伴なっていない」
「これまで問題なかったのに今年は期日までに間に合わない」
「でも努力していないとは言い切れないし…指摘するのも難しい」
現代の育成担当者なら、一度は感じたことがある悩みではないでしょうか。今日は、現代の新入社員(Z世代)の特性を理解し、効果的な育成方法について考えていきたいと思います。
現代の新卒世代の特徴:自己肯定感 vs 自己効力感
多くの管理職が「最近の若手は自己肯定感が高すぎる」と感じていますが、実はこの認識は誤解かもしれません。
自己肯定感と自己効力感の違い
自己肯定感
- 自分の存在そのものを価値あるものとして受け入れる感覚
- 「自分は大丈夫」という基本的な感覚
自己効力感
- 「自分にはそれを実行する能力がある」という確信
- 「自分にはできる」という具体的な行動に対する自信
Z世代は、自分の存在は肯定できても、「実際にやり遂げる力がある」という確信が不足している傾向があるかもしれません。
なぜZ世代は自己効力感が低いのか?
他者承認への依存
現代の若者は、SNSの「いいね」文化で育っています。自分を肯定する根拠が「他者からの承認」に大きく依存しているため、
- 他人に否定された経験が少ない
- 失敗や挫折への耐性が低い
- 承認欲求が非常に強い
デジタルネイティブの特性
- 即座のフィードバックに慣れている
- 長期的なプロセスや地道な努力への耐性が弱い
瞬発力はあるが持久力がない
- 短期集中は得意
- 長期プロジェクトでの継続が苦手
- 長期的なモチベーション維持が困難
効果的な向き合い方:5つの戦略
戦略1:基本姿勢を「指導」から「伴走」へ
従来の上意下達的な指導ではなく、一緒に成長を目指すパートナーとしての姿勢を取りましょう。
Before: 「あなたは全然できていない」(できていない事に目を向ける)
After: 「ここまではできている。次はこれに挑戦しよう」(できている事に目を向ける)
戦略2:承認欲求を成長エネルギーに変える
Z世代の承認欲求を否定せず、小さな進歩を認めることで自己効力感を高めます。
- 小さな進歩でも積極的に認める
- 他の人の前で良い点を褒める(※嫌がる若手もいるので注意が必要)
- 成長を数値化・可視化して「成果」として見せる
- チーム内での貢献を明確化する
戦略3:段階的な難易度設定
タスクの難易度を段階的に上げて、成功体験と適度な挫折を積ませます。
- 確実にクリアできるタスク → 成功体験を蓄積
- 少し背伸びが必要なタスク → 問題解決能力を向上
- 本格的な長期プロジェクト → 持久力と成果創出を習得
戦略4:持久力を育てる仕組み作り
長期タスクを小さく区切り、達成感を感じやすくすることで継続力を育てます。
長期タスクのゲーム化
- 大きなプロジェクトを「レベル1、レベル2…」のように段階分け
- 各段階クリア時に達成感を与える
- 進捗の可視化(プログレスバーの導入)
集中の型を作る
- ポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩)から始める
- 徐々に集中時間を延ばす
- 同じ時間、同じ場所での作業習慣を構築
戦略5:1on1での対話重視
週1回15〜30分程度の個別面談で、困っていることや不安を聞き出すことが重要です。
効果的な質問例
- 「具体的にどんな行動をした?」
- 「なぜそう考えた?」
- 「一番困っているのはどこ?」
- 「どんな支援があれば進めやすい?」
自己効力感を高める具体的アプローチ
- スキルの習得プロセスを明確化
- 「やればできる」ではなく「やり方を覚えればできる」というメッセージ
- 必要スキルを細分化し、学習ロードマップを作成
- 失敗への耐性を段階的に構築
- 失敗のダメージが少ない環境から始める
- リカバリー方法を一緒に考える
- 「失敗は学習の一部」という文化を作る
- メンター・バディ制度の活用
- 年齢の近い先輩をメンターに
- 同期同士でペアワーク
- 困ったときに相談できる環境を整備
フィードバックの現代版「サンドイッチ法」
- 具体的な良い点(お世辞ではなく事実ベース)
- 改善点 + 具体的方法論(「どうすればいいか」まで伝える)
- 期待と励まし(将来への期待を明確に)
例:「昨日の資料作成、データの整理がとても丁寧でした(具体的な良い点)。プレゼン構成は、結論を最初にすると伝わりやすくなります。参考資料を共有するので一緒に見直しましょう(改善点+方法論)。あなたの丁寧さがあれば、必ず素晴らしいプレゼンができます(期待と励まし)」
まとめ:理解と支援で能力を引き出す
Z世代の部下は「やる気がない」のではなく、彼らに不足しているのは、
- やり方がわからない
- 失敗への恐怖心
- 継続する方法を知らない
- 自己評価が現実的でない
この不足部分を補う形で、伴走・承認・段階的課題・持久力・対話の5つの戦略を取り入れることで、部下の能力を最大限引き出せます。
「育てる」のではなく、一緒に成長する姿勢で向き合うことが、中間管理職としての最も効果的なマネジメントです。
現代の人材育成は困難が多いですが、その分やりがいも大きいものです。このブログが、Z世代との向き合い方を見直すきっかけになれば幸いです。
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Z世代の育成に悩む管理職へ—成長を促す方法とは?